さくら木一本道
(勇次)「ハイ?」
涼子は外を指差して言うのだ。
(涼子)「雨降ってるけど大丈夫?」
(勇次)「え?」
外を見ると黒い雲が空を包み、その雲からは大量の雨が、
(勇次)「なあぁぁぁぁ!!?」
勇次はコンビニを出て、雨の当たらない場所で呆然と立ち尽くす。
(勇次)「最悪だ…」
また雨が降るとは予想していなかった。
よって傘も無い、雨具も無い、
コンビニで傘を買いたくても、肉まんだけのお金をポッケに入れて持って来たので、お釣りの40円だけでは到底無理だ。
(勇次)「また雨の中帰るのかよ…」
勇次は空を見つめた後、大きなため息をした。
(勇次)「つーか何してんだ俺は、なんであのゴリラにパシられなきゃいけねぇんだよ… あいつも少しくらい優しさ見してくれてもいいじゃねぇか…」
勇次は周りを見渡した。
空から降る大粒の雨はアスファルトで弾け、瞬く間に水溜まりを作っていく、
周りを囲む山々は、勢いよく降る雨に視界を奪われ姿を見せない。
(勇次)「……」
(勢いよく降る雨か… さくらが好きな風景だって言ってたな)
‐さくら‐
‐音が好きなんだ… 周りの騒音を消してくれて、雨の音だけが残って… 一人の空間に入れて… 嫌な事も頭の混乱もかき消してくれると言うか…‐
アイツは今、この風景を見て何を思っているのだろう…
雨はアイツの混乱をかき消してくれているのだろうか…
突然来てしまった別世界…
どうやって帰れるか分からないという焦り…
二度と帰れないかもしれないという不安、恐怖…
ちゃんとかき消してくれているだろうか…
(勇次)「アイツ… これからどうするんだろ… 帰る方法なんてどうやって探し出すんだ?」
勇次は頭の中で一応考えてみる。
(勇次)「……」
(勇次)「う~ん…」
(勇次)「うぐゥゥゥゥ…」
(勇次)「あああ!!! わかるかぁ!!!」
(勇次)「イヤイヤ… 落ち着け落ち着け… まず、状況を整理しよう…」