さくら木一本道
たしか…
さくらは何かの用で「華顔稲荷神社」に来て…
一本桜を見ていたところ、強風が吹き…
バランスを崩してベンチにつまずき、そのまま桜に飲まれ…
出てきたところ、俺とぶつかり、気付いたら別世界…
簡単に整理すればこんなもんだ。
(勇次)「……なら、もう一回桜に突っ込めば良いんじゃないか?」
(勇次)「……」
(勇次)「そんな簡単な問題じゃねぇか…」
コンビニの前に立ってからどれほどの時間が流れたのだろうか、
太陽が隠れて暗いため、今は昼なのか、はたまた夕方なのか、全く分からない。
時間を知りたくても、携帯は家に忘れてきてしまった。
(勇次)「雨… 弱まらねぇな…」
勇次は目を閉じる。
目の前の現実から逃避するためだ。
そして考える。
少しでも長く時間を潰すためだ。
(勇次)「……」
(そういや、昨日ばーちゃんがさくらに話した昔話… 意外とあれが手がかりかもな、舞台は華顔神社だし、桜の木もあの一本桜だし…)
(?)「……じ…!」
(勇次)「……」
(そもそも、何でばーちゃんはいきなりあんな昔話をしたんだ? いらねぇだろ…)
(?)「ゆ…じ…!!」
(勇次)「……」
(ばーちゃんの考えてる事はわからねぇな…)
(?)「…!!…!!」
(勇次)「もう色々とめんどくせぇな…」
(?)「ふんッ!!」
‐バサッ!!バサッ!!‐
(勇次)「冷てッ!!!」
いきなり顔に水滴が飛んできて、勇次はすぐに袖で顔を拭き、目を開いてみる。
すると、目の前でピンク色の傘が視界を塞いでいた。
見覚えのある傘……そうだ、これは鏡子の傘だ、何故ここに…?
(?)「アンタねぇ…人が話しかけてるのに無視とはどういう事よ…」
あれ…? この声…
ピンク色の傘は、まるで劇場の幕の様に上に登って行き、その幕の中から姿を現したのはさくらだった。
(勇次)「なっ… さくらぁ!?」