さくら木一本道

勇次とさくらは少し歩いて小学校の近くにある、これまた近くの山道を登っていく。

ただ、その山道は細く狭く薄暗い、

勇次の後でさくらが「冷た!!」「毛虫ぃぃぃぃ!!」などと叫んでいるが、勇次は構わずさくらの腕を引っ張り続ける。



(さくら)「ねぇ!? どこまでアンタについていけばいいの!?」



(勇次)「あと少しだ」



(さくら)「あと少しって… こんな山ん中に何があるってのよ!?」



(勇次)「夕日が綺麗な所があるんだよ」



(さくら)「「夕日」って…アンタ馬鹿でしょ!? 今日は雨が…」



(勇次)「ば~か、上見てみろ」



さくらは上を見上げると、木々の間からオレンジ色の空が見えた、と同時に、いきなり勇次は山道から外れ、右の道なき林に進路変更する。

そして、林を5メートル位進むと、いかにも不自然で人工的に積まれた大きい岩が目の前に現れた。



(勇次)「ここだ」



そう言って、勇次はさくらを前に突きだした。

さくらが岩に目を向けると、岩の周りからは夕日が照らすオレンジ色の光が漏れていた。



(勇次)「前に行ってみろよ」



(さくら)「……」



さくらは勇次の顔を見て、「コクン」と首を縦に振り、そして、一歩一歩、岩に向こう側に向けて歩を進めていく、








(さくら)「……!!…」








さくらが見た岩の向こう側は、オレンジ色の光景が広がっていた。

夕日に照らされる「空」「山」「住宅」「水田」、見える物全てがオレンジ色になって、さくらの目に飛び込んでくる。



(勇次)「スゲーだろ?」



(さくら)「……すごい…ホントに綺麗…」



(勇次)「……そうか…」



山から見下ろす景色は、本当に綺麗だった。

この広い景色の中で自分は、小さな一人の人間でしかなく、その小さな人間が抱える小さな問題などぶっ飛ばして、こんな景色を世界は当たり前に創っていく、

しかし、だから何だというのか、

勇次はそんなことを伝えるためにこの場所へ連れて来たのか、さくらは勇次の思いを聞きたかった。



(さくら)「でも… 何でこんな所に私を連れてきたの?」



(勇次)「……ここはな、昔からの俺のお気に入りの場所だ、人も来ないし、静かだし、景色も良い、小さい時は母ちゃんや婆ちゃんに怒られると、すぐここに逃げに来たもんだ……」









……それで終わり?

さくらが聞きたいのはそんなことじゃない、



(さくら)「……で、なんで?」



(勇次)「うっ…」


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