さくら木一本道
(龍巳)「勇次?お母さんか誰か居るのか?」
(勇次)「そ、そうだ!! 今母ちゃんが居るから、や、やっぱり今日は俺ん家で遊ぶの無しってことで!!」
(龍巳)「何言ってんだ、お袋さんならむしろ挨拶しないと」
(勇次)「なぁ!? ま、まて、ちょっとま…」
龍巳は勇次を引っ張る、
後ろではさくらが暴れている、
ただでさえ、怪力のさくらを閉じ込めているだけで精一杯の勇次は、簡単に扉からから離されてしまった。
なんの抵抗も無くなった扉は、さくらの怪力に身を任せ、外側に思いっきり良く開き、その勢いでさくらは玄関に倒れ込む、
もう勇次にさくらを隠す術はない。
(龍巳)「……この子は誰だ勇次? なんでうちの制服を着ているんだ?」
(勇次)「……」
(あぁもう… 最悪だ…)
結局、龍巳にさくらの事がバレてしまった。
とりあえず「勇次」「さくら」「龍巳」は家の中に入り、居間のコタツ机に座る、
そして、勇次は龍巳に変な誤解をされるのは嫌なので、龍巳に全ての事情を話した。
(勇次)「……と言う訳で、コイツは今俺ん家で居候してるってわけなんだ」
(龍巳)「……」
龍巳は黙って「はぁ?」としている。
「何言ってんだコイツ」みたいな顔をするな、バカのくせに、
(勇次)「……信用してねぇだろ?」
(龍巳)「おう、てか話がありえなさすぎ」
(勇次)「ハァ… だろうな、どうするさく…ら?」
勇次が見たものは、勇次の隣で顔をうつ向け、小さい体をさらに小さくしているさくらだった。
ただ、小さくなっていると言っても可愛いものではない、
例えるなら、茂みに隠れて獲物を狙う獰猛な虎のようだった。
さくらよ、なぜそこまで警戒する。
(勇次)「……」
(そうか… コイツは「男嫌い」だったんだっけ… 俺には普通に話せるくせに、知らない奴だとこんな感じになっちまうのか…)
(龍巳)「え~と… さくらちゃんだっけ?」
(さくら)「……」
さくらは龍巳の言葉に返事はしなかったが、それでも顔を上げ龍巳を見る。
若干睨んでいるようだか、龍巳はそんなことを気にせず、訳の分からない事を言い出した。
(龍巳)「うん、今日から君を「さくヤン」と呼ぼう!!」
(勇次)「は?」
(さくら)「は?」
二人は耳を疑った。
そしてさくらは、龍巳に聞こえないようにその疑問を勇次に耳打ちする。
(さくら)「こ、コイツいきなり何なのよ勇次!?」
(勇次)「う…う~ん… ま、まぁ…これが龍巳だ」
親友ながらにバカだと思う、でもそれが龍巳と言う男なのだ。