さくら木一本道
鏡子の一声でこの話しは幕を閉じた。
勇次がなにを言っても無駄なようだ。
あげくの果てには…
(お婆ちゃん)「男なら女の子の攻撃くらい耐えないとねぇ」
と、お婆ちゃんから一喝。
彼女らはさくらの怪力と、人を殴る類い希なるセンスを知らない、それは女子のレベルを越えている、本当に痛いのだ。
だが、信じてもらえない、さくらが田村家に来てからこの4日間、勇次の私生活は体もろともズタボロだ、
(鏡子)「あっ…そう言えば勇ちゃん? ちゃんとお風呂焚いてくれた?」
(勇次)「……がッ!!?」
(鏡子)「あら、忘れちゃったの? 勇ちゃん珍しくミスね」
(勇次)「わ、わりぃ…」
(鏡子)「たまには失敗もあるわよ、ドンマイドンマイ……さっ、今すぐ焚いて来て」
ズタボロだ… 何もかも…
勇次は涙をグッと堪え、ボイラーを焚きに外へ向かった。
(鏡子)「さくらちゃんは私と夕飯の準備を手伝ってくれる?」
(さくら)「あ…はい、もちろん手伝います」
(鏡子)「ありがと~ 助かるわ~」
(お婆ちゃん)「ホントだねぇ、私もさくらちゃんのおかげで楽できるし、最近は台所に立ってるだけでも腰が痛くて… だから助かるわ」
(鏡子)「本当にいい娘が出来たわ」
(お婆ちゃん)「いい孫が出来たよ」
(さくら)「エヘヘ…」
(勇次)「けッ!!」
鏡子達の話を外で聞いていた勇次は、嫌味を込めて強く唾を吐いた。
(勇次)「何が「良い孫だ」ってんだ、はだはだしいにも程があらぁ、アイツはゴリラの毛を被った悪魔だな」
ブツブツと愚痴を吐き、勇次はボイラーに薪を重ね始めようとしたのだが…
‐バキッ!! ドカッ!!‐
次の瞬間にはさくらの手によって昇天していた。
勇次を殴り終えたさくらは、上機嫌で「夕飯~♪夕飯~♪」と口ずさみながら家に戻って行った。
さくらはやはり、かなりの地獄耳なようだ。