さくら木一本道
(鏡子)「やだッ!! 無い!!」
外から帰って来たさくらが台所に行くと、棚を覗きながら鏡子が叫んでいた。
(さくら)「どうしたんですか鏡子さん?」
(鏡子)「醤油があると思ってたら無かったのよ… さくらちゃん…悪いんだけどコンビニで買ってきてくれる?」
(さくら)「いいですよ、わかりました」
(鏡子)「ホント?ありがと~ じゃあお金渡すね」
鏡子は財布から1000円札を取り出してさくらに渡した。
(鏡子)「お釣りはさくらちゃんにあげるからね」
(さくら)「え!? いいんですか!?」
(鏡子)「もちろんよ」
(さくら)「ありがとうございます!! じゃあ行ってきます!!」
(鏡子)「はい、気をつけてね」
さくらは意気揚々と外に出た。
勇次はその様子を薪を焚きながら見ていると、殺気を孕んださくらの視線が向いてくる。
(さくら)「何よ、何見てんのよ」
(勇次)「な、何でもないッス…」
恐ろしい、本当に恐ろしい、
(さくら)「フンッ!! 鼻にススが付いてるわよ」
(勇次)「お? うおッ!?」
(さくら)「フ…マヌケな面だこと」
(勇次)「ぐっ…」
(さくら)「おほほほほ!!」
さくらは高笑いをしながら暗闇に消えて行った。
(勇次)「何なんだあれは…」
勇次は鼻を袖で拭きながら、暗闇に消えたさくらを見送った。
(涼子)「いらっしゃいませー」
しばらくしてさくらはコンビニに着いた。
コンビニにはショートカットで40代位の女性店員(高森 涼子)が一人と、2~3人位のお客がいた。
(さくら)「え~と…醤油醤油…あった!!」
さくらは適当な醤油を手にとり、レジに持って行く、
(涼子)「…いらっしゃいませ~」
レジを対応したのは涼子で、このとき涼子はある事を思っていた。
「見かけない子ね…」
田舎のコンビニで夜に来る客など、ほとんどが顔見知りであり、見知らぬ少女がめずらしかった。
さらにその少女は、知り合いである勇次の高校と同じ制服を着ているのだ。
(さくら)「これお願いします」
(涼子)「はい」
‐ピッ‐
(涼子)「298円になります、 1000円からですね、702円のお釣りになります… ありがとうございました」
その少女(さくら)は醤油の入ったレジを手に持ち、コンビニを後にした。
(涼子)「あの子、制服着てたけど… 勇次君と同じ北総の制服よねぇ… 今度勇次君に聞いてみよ」