さくら木一本道
(鏡子)「ナイスさくらちゃん、そのままキープして~」
さくらは卍固めをかけたまま勇次に話しかけた。
(さくら)「アンタ、何でそんなに嫌がるのよ?」
(勇次)「き、嫌いなんだよ… 服屋の雰囲気が…」
勇次が服屋嫌いな理由は他にもある、
まず、田舎には中年とお年寄りが多い、
女性は婆さんになっても服を買うが、爺さんは話が別だ、ほとんどの爺さんはファッションに興味がない、
そのため、田舎の服屋は「お年寄り向け」かつ「女性向け」の商品が多い、男性用の服なんて店内に20%位しかないのだ。
(勇次)「あと、厚化粧の中年オバサマが集まった時の匂いが苦手だ…」
(さくら)「あぁ~… それはわかるわ、「参観日の教室現象」ね」
(勇次)「ハァ…そんな臭いを嗅ぎに行きたくねぇ~…」
(鏡子)「大丈夫よ勇ちゃん、今日はいつも行ってる服屋とは違うところに行くから」
そう言って鏡子は、人差し指で車の鍵をクルクルと回す。
(勇次)「あ? じゃあどこに行くんだ?」
(鏡子)「ふふん、「イヲン」よ「イヲン」」
(勇次)「「イヲン」って、駅前のあのデケェ「ショッピングセンター」か?」
(鏡子)「そうよ、もう出掛けるからあなた達も用意してね」
鏡子はそのまま隣の寝室に消えていった。
二人きりになり、いい加減解いてほしい卍固めをかけられたまま、勇次はさくらに話しかける。
(勇次)「なぁさくら、お前の世界にもイヲンあるのか?」
(さくら)「あるわよ、同じく駅前に」
(勇次)「やっぱあるか…」
(さくら)「でも、場所が同じでも外観まで同じとは思えないわ、イヲンってかなり大きいじゃない」
(勇次)「さすがにイヲンはなぁ…」
(さくら)「さ、無駄話してないで私達も準備しましょ」
(勇次)「……ならよ… 今かけてるプロレス技を外してくれ…」
(さくら)「卍固めって言うのよ、体で覚えな…さい!!」
‐ギチィィィ‐
さくらが力を強めると、勇次の関節がさらに悲鳴をあげるのだ。
(勇次)「イデデデデッ!!! やめッ!!! ギブゥゥゥゥ!!!」