さくら木一本道
(鏡子)「私たち…本来の目的を忘れてたわ」
(さくら)「目的?」
(鏡子)「さくらちゃんのし……―」
(さくら)「!!…でも勇次が……―」
(鏡子)「勇ちゃんには待って……―」
(勇次)「……何をコソコソと話してんだアイツら…」
何を話しているかはどうでもいいが、腹も減ったことだし、早く用事を済まして欲しいものだ。
勇次がそう思っていると、話し終えた二人が目の前に立って言うのだ。
(鏡子)「勇ちゃん悪いんだけど… ちょっとここで待っててくれる?」
(勇次)「別に構わねぇけど… どうした? 何を買い忘れたんだ?」
(鏡子)「ちょっとね、すぐ買って戻って来るから!!」
そう言い残し、さくらと鏡子は店内に消えていった。
(勇次)「何なんだ…」
しばらくしてさくらと鏡子は、来るときにはなかった黒い紙袋とともに帰ってきた。
(鏡子)「勇ちゃんお待たせ~」
(勇次)「何買ってきてたんだよ」
(鏡子)「大事な物よ」
(勇次)「「大事な物」?」
そう遠回しに言われると、かえって気になるのだが、
(鏡子)「さっ、買い物も終わったし、お昼でも食べに行きましょ」
(勇次)「どこに?」
(鏡子)「ファミレスに行きましょ、何でもあるし」
(勇次)「結局ファミレスかよ」
(鏡子)「何か不服でも?」
(勇次)「いや…」
(テメェで決めるなら、最初からテメェで決めればいいのに…)
三人は車へ向け歩き出す。
歩きながら勇次は、さくらが持っている黒い紙袋を見た。
(勇次)「…ヴェネー…マム…?」
勇次が紙袋に書いてある文字を思わず読むと、間髪入れずさくらの裏拳が飛んできた。
‐バキッ!!‐
(勇次)「おごッ!!?」
裏拳は見事勇次の鼻に当たった。
(さくら)「そんなに変態と呼ばれたいか!! 変態!!」
(勇次)「イデデ…何で袋の字を読んだだけで変態扱いされなきゃいけねぇんだよ!!」
(さくら)「う、うう、うる…うるさい!!」
さくらが顔を真っ赤にしながら、勇次に殴りかかろうとした瞬間、
‐ビリッ!!‐
紙が裂けるような音がなった。
(勇次)「あ…」
(さくら)「あ…」