さくら木一本道
勇次の家から真っ直ぐ行くと、川沿いの道に出る。
その川の向こう岸は水田地帯が広がり、その水田地帯の中に田村家の田んぼがある。
そこへ向かうために、勇次とさくらは田んぼ道を歩いてくのだが、
当然のように、さくらの愚痴が始まりだした。
(さくら)「暑い… メチャクチャ暑いわ…」
(勇次)「ここはちょっとした平野だからな、暑いのも無理はない」
(さくら)「あぁ~もう!! 何で私が暑い中農作業なんかしなきゃいけないのよ!! でもお世話になってる以上、手伝うのは当たり前な事だし… でもこの時間を使って資料探しをしたいし!!」
(勇次)「頭の中が?」
(さくら)「ごちゃごちゃよ!!」
(勇次)「……なるほどな…」
勇次はさくらの心境を理解した。
だが、さくらの文句はまだ続く。
(さくら)「第一何なの!? この「ツナギ」と言う名の作業着の色は!! この中途半端な緑色は何!? ダサいにも限度があるわよ!! 着てて恥ずかしいわ!!」
(勇次)「作業着にオシャレを求めるなよ…」
(さくら)「う~ん… ピンク色のツナギでもあればいいのに…」
(勇次)「まぁ…あるにはあるが… 農業するのにピンクは無いだろ…」
(さくら)「え~イイじゃない、農業だろうとオシャレしたって」
どうしてもオシャレを求めるさくらの後学のために、
勇次は立ち止まり、一つ現実を教えることにした。
(勇次)「あのな…想像してみろ、農業は土ほこりもかぶるし泥水にだって入る。肥料と言う名の牛の糞や鶏の糞をぶちまけなきゃいけねぇ時もあるんだぞ? それを汚れの目立つピンクのツナギにさらしてみろ、ハイ!! どうなる!!」
(さくら)「……身体中…ウンコの跡まみれ…」
(勇次)「その通り!!」
(さくら)「嫌ぁぁ!! 農業嫌ぁぁ!! ウンコまみれになりたくない!! 農業汚い!! 臭い!! そんなの嫌!! 私帰る!!」
逃げようとするさくらだが、
勇次はさくらの襟足をしっかりと掴み、逃がしはしなかった。
(勇次)「まぁ待てさくら」
(さくら)「嫌嫌嫌!! 離してよアホンダラー!!」