さくら木一本道
(勇次)「「臭い」「汚い」「結婚出来ない」「カッコ悪い」「稼げない」「金が掛かる」、今の言葉の頭文字を取って「6K産業」ってわけだ」
本来なら「3K産業」という言葉が主流だが、とある知り合いの農家がそんなことを言っていたので、勇次もそう言うことにしている。
(さくら)「……良いとこナシね…農業」
(勇次)「いやいや、農業だって良さもあるぞ」
(さくら)「は?」
(勇次)「まぁ、そんな話しは置いといて…」
勇次は田んぼの前に立ち止まった。
(勇次)「着いたぞ、ウチの田んぼに」
さくらが田んぼを見渡すと、
50mプールと同じ位の広さのある田んぼのむこう端で、トラクターにまたがりながらコチラを向いて誠雪が手を振っている。
しばらくして誠雪は、トラクターの爆音とともに、勇次達の前へとやって来くるのだった。
‐ドドドドドド…―‐
(誠雪)「ハ…、…ともお…れ…ん」
‐ドドドドドド…―‐
(勇次)「兄貴!!エンジン切れよ!!全く聞こえねぇんだけど!!」
勇次は手首を回し、エンジンを切るジェスチャーをする。
‐ドドド……‐
それに気付いた誠雪は、トラクターのエンジンを止めた。
(誠雪)「ハハハ、悪い悪い、それじゃあ作業開始するか、まずは肥料を撒くからな」
誠雪は何かを探すように周りを見渡す。
(誠雪)「あっ、来た来た」
すると歩いてきた農道から、一台の軽トラがこちらに向かって走って来る。
その軽トラは勇次達の前で止まり、中からお婆ちゃんが出てきた。
「というかお婆ちゃん運転出来たんだ」
とか皆さん思いだろうが、
高年齢なので運転は控えているだけで、お婆ちゃんはバリバリ運転出来る。
何なら誠雪以上にトラクターも動かせる。
(誠雪)「やー悪いねバアっちゃん」
(お婆ちゃん)「いやいや、そんなことをないよ、誠雪が乗せた肥料とバケツだけで良いんだよね?」
(誠雪)「OKOK」
(お婆ちゃん)「じゃあお茶の仕度でもして待ってるから、疲れない程度にやるんだよ」
(誠雪)「おう、わかったよ」
そう言って、お祖母ちゃんは軽トラに乗り込み、家へ帰って行った。