さくら木一本道
(誠雪)「さてと、じゃあ今度こそ作業開始だな。勇次、バケツ並べて」
(勇次)「おう」
勇次が並べたバケツに、誠雪が肥料を入れていく。
肥料を入れられたバケツをさくらが覗くと、白い小粒がバケツの中に入っていた。
さくらが想像していたのとは大分違う、
(さくら)「……これが…肥料?」
(勇次)「そうだ、これが「化学肥料」ってやつだな」
(さくら)「ふ~ん… 何か「化学肥料」って、体に良くないような響きね」
(勇次)「そりゃ一般人の考え方だな」
(さくら)「何よ!! 馬鹿にしてんの!?」
(勇次)「ち、ちげぇよ、普通のヤツは「化学肥料」の「化学」って部分で誤解すんだよ、「化学」イコール「体に良くない」てな」
(さくら)「違うの? 自然の肥料の方が「安全で美味い!!」ってイメージがあるけど?」
(勇次)「う~ん…どうかな、あんま変わらないんじゃねぇの…かな?」
(さくら)「そうなの?」
(勇次)「変わらないと言うか何と言うか…要は農家の腕しだいだな、良い作物を作るのに重要なのは「土質」と「気候」と「水」だから、作物に合わせて程よく有機肥料を撒いてる土なら、良い作物が出来る…と、俺は近所の農家から聞いた」
(さくら)「ほうほう」
(勇次)「「美味い作物」イコール「商品の付加価値が上がる」からな、農家も必死なんだよな」
(さくら)「へぇ~」
(勇次)「しかも「良い作物」ってのは、美味いだけじゃなくて「見た目」も大事だ、そのために農ヤ…」
(さくら)「フ~ン」
(勇次)「……」
(さくら)「あちゃー」
勇次が会話のボールを投げるっきりで、全く返してこない、
というか、返す気が全く感じられない、
(勇次)「……もういい…」
(さくら)「あら? もういいの? せっかくアンタの農業節を聞いてあげてるのに」
(勇次)「無理して聞かなくてけっこうだ」