さくら木一本道
(さくら)「やだやだ、ふてくされちゃって、男のジェラシーってやつ?」
(勇次)「前にも言ってただろ、そのセリフ…」
(さくら)「じゃあ大事なことだから二度言うわよ、男のジェラシーってやつ? みっともないわ」
(勇次)「……」
苛立ちより先に、くだらなすぎて言葉も出なかった。
勇次がそんな心境だとはつゆ知らず、誠雪は声を張り上げて―
(誠雪)「よしっ、分け終わったぞ!!」
と、余った肥料が入っている袋を地面に放り投げるように置いた。
さくらはその大量に余った肥料を見て、とある疑問が湧いてきた。
(さくら)「誠雪さん、肥料ってこれだけしか撒かないんですか?」
誠雪は手に付いたホコリを叩いて落としながら、さくらの疑問に答える。
(誠雪)「うん、ウチの田んぼは小さいからね、本当は有機肥料を撒きたいんだけどさ…」
そして有機肥料を使わない理由を、誠雪は指を数えて説明していく、
(誠雪)「速効性が無いし、栄養成分はばらつきがあるし、天気によって栄養の効き始めが違うし… とにかく、俺らみたいなペーペー(未熟者)には扱いづらいんだよ、まぁ…そのかわり安いんだけどね」
解説を終えた誠雪は、さくらに肥料が入ったバケツを手渡した。
(誠雪)「さぁ、肥料を撒いてみようかさくらちゃん!!」
(さくら)「はぁ…」
さくらは渋々とバケツを受け取る。
勇次と誠雪もそれぞれバケツを手にとった。
それを確認した誠雪は、消しゴム位の大きさの石を手に取り、道路のアスファルトに長方形を書き始めた。
(誠雪)「この長方形が田んぼだと思ってくれ、今から肥料を田んぼに撒くわけだが、肥料ってのはなるべく均等に撒きたい、そのためにはどうするかと言うと…」