狂暴わんこのひとり占め。
「………詐欺だ」
「いや それほどでも」
「ほめてない!てか早く退きなさいよっ」
いつまでこの体勢でいるつもり!?
いい加減 心臓もたないわよ…
「ふあ〜い…」
「なんでちょっと残念そうなのよ」
やっと自由になれたわ。
今度は捕まらないよう気をつけなきゃね…。
「じゃ、この先は"おあずけ"ね」
「はい?」
おあずけって、飼い主が犬に使う言葉じゃなかったかしら?
企んだような笑みでこっちを見る灯夜。
もう怖い。
「じゃ、お風呂かりまぁす♪」
「………どぞ…」
何故かご機嫌で去っていく仔犬。
いや 狼か。
仔犬の皮を被った狼だな、あれは。
奴が見えなくなると、私は力が抜けたように床に座り込んだ。
「この先、不安………」
唇を軽く袖で拭いながら、大きくため息をついた。