鬼守の巫女・番外編
「……遅いね、魏戎」
その小さな呟きに、そっと彼女を振り返ると、夕焼けのオレンジの光が彼女の横顔を照らしていた。
それを暫く何も言わないまま見つめていると、心臓がドクドクトと鼓動を速めるのを感じる。
「……凪」
小さく名前を呼ぶと、彼女は僕を窺う様に顔を上げた。
その瞬間、そっと彼女の唇に……自分の唇を重ねる。
それはほんの、瞬きをするほどに一瞬の事で、すぐにハッと正気に戻ると慌てて彼女から距離を取った。
……どうしてこんな事をしてしまったのか……僕にも自分の考えが分からない。
彼女は驚いた様に目を見開いたまま、まるで彫刻の様に動かなかった。