すずのうた(仮)
「いらっしゃいませ~」
いかにもチャラそうな店員が
だるそうに顔をあげながら
こっちを見るのを無視して
私はいつもの棚へ向かう。
「あった~♪チョコクロと、カフェオレと…」
お決まりのメニューを掴んだ私はレジへ。
相変わらず店員はだるそうに接客をしている。
「…っすか!?」
「ん、え!?」
店員の言葉が聞き取れず、
私はいそいそとイヤホンを外して
愛想笑いをふりまいた。
「すみません、今何て…」
「いや、だからぁ、温めますかぁ?」
温めるって何を!?
チョコクロ!?
それ邪道でしょ!
確かに美味しそうだけど!
そう胸の内でツッコミながら
「いぇ、いいです…」
と軽く会釈をして
スーパーの袋を掴んだ。
「あざ―したぁ―」
店員の声を聞きながら
自動ドアの前に立つ。
うぃ―ん
扉が開いた瞬間
外の音が耳に飛び込む。
若者たちの笑い声
クラクションの音
信号が変わることを知らせる音
しかし今日はそれだけではなかった。
鈴のような歌声が聴こえてきたのだ。