金木犀〜恋の香り〜
第5章:金木犀
約束の時間は、とっくに過ぎていた。
半ば諦めの気持ちで、ドアを開ける。
「いらっしゃいませー」
店員さんの声が店内に響く。
あの日、俺達が座った場所に…
彼女はいた。
「南っ…ごめんな、遅くなって…」
「あ、ううん…来てくれたんだね…ありがとう。座って?」
「俺、お前に話があるんだ…!」
「えっ…?」
いい話は想像してないのだろう、
少し表情が不安そうだった。
「あたしも、あります」
「ごめん、俺からしていい?」
「え……うん…」