歪な-さんかく
「付き合ってはいる…」

「やっぱりぃ!美男美女だもん、お似合いだよ!!」


カフェオレのストローをくわえながら自分の事の様にはしゃぐ藍から視線を外して、気付かれないようにため息を吐いた。


「で、なんでそうなったの?」

「そうって?」

「だぁかぁらぁ、生徒会長との馴れ初め!」


ズィッとスプーンをマイクみたいに向けた藍は煩い写真部みたいだ。


ここは正直に話すべきなのでしょうかね…

あたしは一番深い部分を隠しながら藍に話しを始めた。




*********


1週間くらい前の話―


「宝生鈴ちゃん、僕と付き合ってくんない?」


知らない人からの告白にあからさまにため息をついて見せる。

赤い髪をヘアピンで留めていて、ピアスの穴がある。あまりガラのイイ人ってワケじゃなさそう…


こんな事が生徒会に入ってからよくある。

壇上であたしを見て一目惚れしたとかなんとか、結局は外見的なモノで好き嫌いを判断してる訳でしょ?

そんな人、好きになんかなれないし…

そもそも赤髪ピアスは好みじゃないし


「ごめんなさい、付き合えません」


眈々と言ってその場を後にしようとしたのだけど、いきなり捕まれた腕に動きを封じ込められてしまった。


「待ってよ」

「放してください」

「冷たいなぁ」

「すいませんが、先輩に温かくする理由がないんで」


ココまではよくある事だから、あたしも慣れっこだった。

グッと捕まれた腕を自分の方に引っ張って


「叫びますよ?」

「なんて?助けてって?まだ何もしてないじゃん?」

「まぁ…そうですね」

「まぁ、いいや!まだ諦めたワケじゃないから、考えといてよ!」


パッと腕を放されて、今度はネクタイを捕まれた。ツゥッと頬を指でなぞられ、唇が触れそうなギリギリまで近づかれ、「またね」と耳元で囁かれる。

ゾクッとした感覚にキッと相手を睨むと


「気の強い女って好みなんだよね~」


飄々とした態度でソイツは去っていった。



あたしはキュッとネクタイを整えてから生徒会室に足を運んだ。



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