歪な-さんかく
「鈴君、聞いてる?」

手のひらをヒラヒラされてようやく覚醒したあたしは


「あ、ハイ!聞いてます」
「さっきみたいな事からも守ってあげれると思うしね」

「さっき?」

「中庭の隅で迫られてただろ?三年の赤い髪のヤツに」

「…!!見てたんですか!」

「校内で何度か目撃してるよ?男子だけじゃなく女子にも人気があるんだね、鈴君は」


だけど…御堂先輩はそう繋げてから


「その分だけ敵も多い。振られた男子の怨みとか、彼氏を盗られたと勘違いした女子とか…ね?上履き今学期で何足目?」

…そんな事まで知ってるんだ


先輩、口元は笑ってるのに…目が笑ってない


「なぁんてね!そんなに脅えた顔しないでよ」

「へ?」


ポンポンと頭を撫でられた。


「そんな事言う俺も同じなんだよ。女子の怨みと男子の妬みに苦しんでるんだよ」


ニコニコと笑っている先輩からはそんな感じは微塵も感じないのだけど…


「そこで、俺と鈴が付き合ってるって公認されればそういった嫌がらせ的な事が少なくなると思うんだよね。生徒会役員同士が一緒にいても不自然じゃないし、それだけ一緒にいればLOVEが芽生えてもおかしくはないだろ?」

「そぅゆぅもんですか?」

「そーゆーもんです!なぁんて、口実で、俺が鈴と付き合いたいだけなんだけどね」

「はぁ…」


クルクルと表情を変える御堂先輩。

明るい茶髪(地毛らしい)はあの子に似た色をしている。


「あと一つ、鈴の秘密を俺は知ってる。多分、鈴もお幼馴染み君も知らないだろう秘密。そして俺にも秘密がある。」

「ひ…みつ?」


ゆっくりつむがれる言葉に喉が渇く。

知りたいのに、知りたくない…



「好きな人に好きと伝えられない…」

「好きな」

「そ?鈴、君が好きなのは…」



*******

「鈴は生徒会長が好き?」


藍は残酷な事を無意識に、無邪気に訊いてくる。

あたしの心が叫び声をあげる。



ねぇ?藍、あたしがその唇に触れたいって言ったら

…どうする?
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