歪な-さんかく
ファイルにセロハンテープで貼り付けられた鍵。

ファイルには「サッカー部、備品一覧」とテプラテープが貼ってあった。


基本、一年生が部室を開けて部室の掃除をして準備をする。それから先輩を迎えて朝練が始まる。 運動部の暗黙のルールってやつらしい。


ファイルを何気なく開くとパソコンで作られた直線で囲まれた表にはビッシリの備品の名前と数、購入日等が打ち込まれている。

そんな事務的な文字の並びの表を捲ると



『朝練頑張ってね!次はスタメン♪(^ー^)鈴』



薄いブルーの付箋紙が貼ってあって、そんなメッセージが書いてあった。



鈴らしい



なんとなく胸の辺がむずかゆい。
俺はメモ用紙を穿かずと
ソレをポケットに押し込み、ファイルをスポーツバックにしまい込むと家を飛び出る様に出た。



走っていけば追い付くかも…



今、50mのタイムを測ったら多分新記録が出るんじゃないかって思うくらいのダッシュで鈴を追う。

追い付いたらなんて話しかけよう?

ありがとう…じゃないな
まずは、おはよかな?


そんな事を考えていると
ようやく小さな背中を見つけた。



「り……!」



続きの言葉を無意識に飲み込んだ。振り上げた掌が虚しく空気を掴んだのを感じた。



鈴の隣には―――



「…だいたい御堂先輩が悪いんですよ!」

「え―なんで?」

「いきなり迎えに来るからじゃないですか!母は焦るし、父なんか珈琲溢しちゃうし」

「珈琲溢しちゃったんだ?」

「そうですよ!やけどしてないとイイけど…」



鈴の隣には彼の姿があった。

《御堂 晴哉 ミドウハルヤ》。
ウチの学校の生徒会長で容姿端麗で秀才、ファンクラブまであるようなヤツ。それに重ねて…



「キャプテン!」

「おう、エンか!おはよう」


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