歪な-さんかく

腹が立つほどに爽やかな笑顔のサッカー部のエースストライカー。噂でプロサッカーのユースからも声がかかってるとかなんとか…



「ぁ、エン。おはよう」

「…………、」


俺の声に振り向いて挨拶してくる鈴は敢えてスルーする。




「今日も朝練休みですか?監督がぼやいてますよ、ウチのエースストライカーは多忙すぎる。って!」
「あはは!」

「笑い事じゃないッスよ!試合もあるのにろくに部活も来ないじゃないですか!」



その分、アンタはずっと鈴と一緒なんだろ?

心の声をグッと飲み込んだ。




「ごめんな!でも部室の鍵の件と備品の把握が出来たら少し楽になる予定だから」


先輩は笑いながらポンポンと俺の頭に手をのせる。
まるでガキ扱いされてる…ムカつく!



「頼みますよ!後、ファンクラブの人達のブーイングも…、最近じゃ他校の女子も…」


「あ~もう!わかったって!エンはうるさいなぁ」


俺の愚痴に先輩は眉毛を下げて困った様に笑う。



そんな事を話しながら俺は先輩と鈴の間に割り込んだ。



「あ、そうだ鈴!」


先輩はさも当たり前の様に鈴を呼び捨てにしてチョイチョイと耳打ちをした。

鈴も特に意識もせずに近づいて二人はクスクスと笑顔を交すと、鈴はゆっくり頷いて


「じゃ、あたし先に行って支度しますね!」


鈴が行ってしまう。
紺のプリーツスカートがゆらゆらと靡いていた。


よく考えたら、俺ってば…鈴と話してねぇじゃん



また小さくなる背中を見つめていると



「エンさぁ、男の嫉妬とかカッコ悪いよ?」


さも楽しそうな笑顔の御堂先輩が俺の耳元でそう囁いた。


「え?」


背筋に冷たい何かが走ったのを感じた。


「そんなに鈴が気になる?」

「そんな事は…ないですけど」

「そ?」


余裕たっぷりな顔が勘に触る。
容姿に恵まれ、頭も良くて、女の子にモテて、凡そのモノを持っている人が何故に鈴を…



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