歪な-さんかく
部室につくと何人かの一年生が既に来ていて部室前でしゃがみ込んでいた。
部室を開けてボールだのカラーコーンだのを引っ張り出していると声をかけられた。



「あの…葉月君」


俺と同じ色のジャージを着ている一年生であろう女子が三人、脅えた様な顔をして俺を見ている。


「ん?何か用?」

どう見ても告白とかそんな甘い感じではない顔にヒヤリと背筋が冷える。


「どうかしたの?」

「あのね、鈴ちゃんが…」
「剣道部に絡まれてるの、」
「ウチの部室、剣道部の隣で怖くて…」


パフュームかと思える息の合った連繋発言に「はぁ…」と溜め息が出る。


「葉月君、幼なじみなんでしょ?助けてあげて!」


真ん中のロングヘアーの女子が両手をグッと胸の前で握っていた。

とりあえず、近くにいた部員に抜ける事を告げて彼女達の部室の方へ駆け出す。

運動部の部室は二ヶ所にまとめられていて、運動場に面したコンクリート造りの部室は主に運動場を使うサッカー部、野球部、陸上部なんかが使っている。 体育館や中庭、特設コートをつかう部活は体育館裏通路に面したプレハブで、コレがちょっとした死角を作る。

鈴はソコで剣道部に囲まれているらしい。


体育館側から回り込むと、聞きなれた鈴の声が聞こえた。



「その件は直接生徒会室に来てください」

「それじゃ通らないから鈴ちゃんに頼んでるの?ほら、鈴ちゃんって会長の彼女でしょ?彼氏に頼んでよ?」

「だから無理ですって、さっきから言ってるじゃないですか!部費は年間を通して決められてるし、きちんと成果を出すか部員が増えなくちゃ増えないってのが…」


何人もの男子に囲まれているのにキッと相手を睨み付けている鈴。
男子は鈴を鈴を楽しそうに見ている。


「ちょ…」


口から一文字が出たときフッと鈴と視線が合う。
鈴はゆっくりと首を左右に振って、口元を歪ませた。


「コレ、鳴らします!」


ピーーーーー!!!!


途端に鳴り響くブザー音。痴漢用防犯ブザーに男子が怯んだ隙に


「エン!!!」


腕がグンッと引かれた。
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