歪な-さんかく
階段を駆け足で登り三階の教室に到着すると、既に教卓には担任がいた。

あたしがこんな風にホームルーム中に入ってくるのは茶飯事だからか担任は注して何も言わず、あたしも黙って席につく。



「おはよ、鈴」


隣の席のミホが囁くように挨拶してきたのであたしもソレに倣って囁くように挨拶を交わした。


机の中に手を入れると――



…カサッ

指先に触れるのは紙の感触。それは二種類の手紙だ。

無造作にグシャグシャにされた紙には怨みやら妬みやら、消えろやら死ねやら…だいたいホントにコレが苦で死なれたりなんかしたら困るのはソッチのくせに。

あと一種類は、バカみたいにみんな同じ単語が書いてある手紙だ。


だいたい、簡単に『付き合おう』とか言われても、一方的に好きとか言われても、あたしの何を見てそう言うのかが分からない。



小さく溜め息を付くと


「今朝も大変そうだね…」


からかうみたいな笑顔のミホにハハハと先輩みたいな乾いた笑いを漏らした。






「宝生、この後俺と職員室来いな~」

「え~、なんで?」

「え~って間延びした声出すなよ、今朝の件で話しがあるから、だから職員室な!」



白と緑のジャージを着た担任はあたしを手招きして呼び寄せる。

そして――連行された。




馴れ馴れしく肩に手を置いてあたしを誘導する担任に気がかりな事をそこはかとなく確認する。



「先生、あたし…だけ?」
「あ?何が?」

「今から職員室呼ばれてるの…」

「あ―っと、剣道部の連中と女テニの数人と………葉月円」


やっぱり―――


こうならない様にあたしはエンと逃げたのに、あたしの全力ダッシュを返して欲しい。


それよりもだ、


「先生、エッ…葉月君は関係ないので呼ばなくていいと思いますよ!特にナニカあったワケじゃないし…」

「そうなのか?でも、この話しを持ち出したのはソノ『葉月』なんだぞ」



なんですと!!!


あたしはあの時言ったのに!
試合があるんだからって、あたしは大丈夫だからって


なのに、あのバカはっ!
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