歪な-さんかく

「エン、部活決めた?あたし、テニスかバレーか陸上にしようかなぁ」」


相も変わらず三人帰る途中、ペラペラと入部申し込みのプリントを眺めながら鈴が俺に尋ねた。


「ん?多分サッカーかな」


俺の名前は漢字で《円》と書くからと、鈴は《エン》と呼ぶ。 いつの間にか他の奴等もソレにならい、俺のあだ名は《エン》になった。


だけど…


「まぁ君はサッカーかぁ、じゃ藍はマネージャーになろうかなぁ」

「藍が?鈴ならまだしも甘ったれの藍じゃ無理じゃね?」


俺を昔通りに《まぁ君》と呼ぶ鈴は俺の言葉にぷぅっと頬を膨らませた。


「なんでよぉ!藍はまぁ君の為なら頑張れるのにぃ!!」


可愛らしい仕草で可愛らしい言葉をつむぐ藍に鈴が苦笑する。


「相変わらず藍はエン大好きっ娘だねぇ」

「うん!藍はまぁ君大好きだもん」


ギュッと俺の腕にしがみつく藍の頭をくしゅくしゅと指に髪を絡ませながら撫でる鈴は優しい目で藍に微笑んだ。

藍もなついた兎みたいに目を細めて鈴に身を委ねていた。


この二人は時々、まるで恋人みたいな雰囲気を纏う気がする。 元々が一つの細胞だったからか、


はたまた…



「で?鈴はどうすんのさ、部活」

「うん?あ―、…もう少し考える」


チラッと藍を見て鈴がそう呟いた後、「先に帰るね」と言って鈴は走りだした。




感じたのは違和感。

鈴の藍に対する気持ちと、いつからか俺の中に芽生えた小さな気持ちと、あからさまにぶつけられる藍の俺に対する気持ち。


違和感が確信になるのはすぐで、小さくなる鈴は近くにいるのに

…凄く遠い。


遠いんだよ、鈴…
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