歪な-さんかく
「ねぇ、まぁ君?」

「…………」

「ねぇってば!」

「…………」

「ねぇってばねぇってばねぇ!」


何回呼んでも返事がない。

まぁ君の部屋に遊びに来たのは久しぶりだった。一人で来たのは初めてだった。

いつも鈴が一緒だったから。



鈴は保健委員会の副委員長で会合があるとかで帰りが遅くなる日があって、クラスが離れた事でまぁ君と一緒にいる時間が減っていた。


ベッドでごろんの寝そべるまぁ君は私なんて気にする素振りもなく、最近ハマッている少年忍者の漫画を読んでいて、ん~とかあ~とか生返事しかしてくれない。

…鈴といる時はゲームとかしてるくせにっ

私、知ってるんだからね!私がいなくても二人で遊んでる事!


イライラしてくる。


「まぁ君まぁ君まぁ君!ねぇってばねぇってばねぇっ!」


ベッドに飛び乗ってユサユサと身体を揺すると


「なんだよ…俺、漫画読んでんだけど…」


至極かったるそうにまぁ君は漫画から顔を反らしてその目に私を映した。



すかさず私は自分の唇をまぁ君の唇に重ねる。


「…なっ!」


ドンッ


「キャッ!」


いきなり突飛ばされた私はまぁ君の横に尻餅をついた姿勢で座り込んでしまう。


焦って真っ赤な顔でまぁ君は上半身を起こして、


「何してるんだってばよっ!」


今しがた読んでいた漫画の主人公の口癖を披露するほどにテンパったまぁ君は怒っているのか、照れているのか分からない表情をしていた。



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