この涙が枯れるまで
広瀬ナナが歩いてくる。
僕達の方へと。
『ごめんね?迷惑じゃない?』
『全然!よろしくな!!』
歩が笑顔でナナを受け入れた。
『私、広瀬ナナっていうから…それに私何か入ってよかった? 沙紀さん…ごめんね?』
『気にしないで!!それに私の事は沙紀でいいから!
私はナナって呼ぶ!』
『ありがとう』
ナナは安心した顔で微笑んだ。
『座れよ』
僕はナナを輪の中に入れる。
ドクン…ドクン…
忘れかけていたあの感覚が蘇る。
百合と同じ感覚。
横にいるのは百合じゃないのに。
何でだろう。
ただ初めて喋ったから緊張しているだけなのかもしれない。
僕は百合が好きなんだ。
でもなぜかナナが横にいると、百合の事なんかもうなくなっていた。
『沖縄っていったら~海だよな!!』
『そうだね~!でも10月だとね~…』
『だな~』
『でも夜の海はキレイだとおもうよ』
ナナが僕達の会話に入る。
僕は嬉しくなるんだ。
『えっと…鈴木君…だよね?』
すると、ナナが僕に話しかけてきた。
周りの声で、あまり聞き取れなかった。
『え?』
『間違ってる?』
『…優でいいよ』
『じゃあ優ね、大丈夫?』
『え?何が?』
『優はいつも何か考えてるから』
『………』
ナナは僕の心が読めるのかな。
僕は思ったんだ、ナナが僕を救ってくれるって。
僕の心に一つの救いの手が射しこんで来た。
それは百合の手?
違う。
すっとしていて細長い指。
そう、ナナの手だったんだ。