この涙が枯れるまで
あれは涙?
ナナ泣いてるの?
ナナの涙は何かに似ている。
あの日の百合の涙に似ていたんだ。
ドクン…
ナナが気になる。
僕は百合がまだ好きなのに、ナナが気になるんだ。
ホント僕はずるい人間だ。
──…長い夜が明け、朝になった。
頭の中からナナの涙が消えない。
消えてくれない。
僕は学校へと行った。
『優~おはよ』
『お~安里』
安里は朝練をしていた。
安里はまだ百合と付き合ってるのかな。
気になるけど、聞かない。
またヤキモチをやくから。
僕は教室に向かう。
まだ歩と沙紀は来ていない。
その教室にはナナがいた。
ナナは本を読んでいた。
『ナナ?おはよ』
『おはよ』
とニコッと笑う。
昨日の涙は何だったんだろう。
あの涙はうそのようだ。
『ナナ…昨日…』
『ん?昨日?』
『いや、何も』
『そう?』
ナナは本に目を戻す。
僕は胸が苦しくなる。
ナナの事が知りたい。
ナナに近付きたい。
そう思っていた。
ふとナナの手首を見る。
そこには切傷があったんだ。
『ナナ…お前手首…』
そう言うと、ナナは手首を隠してどこかへ行ってしまった。
ナナ、君は僕と似ている。
こう思ったのは、君の過去を知ってからなんだ。
ナナ、僕は君の中には入ってはいけませんか?