この涙が枯れるまで


僕は教室から出ていったナナを追い掛けた。

『おっ優~?』

『歩おはよ!!ちょっと行ってくる』


『どこにだよ?』


『ナナのとこ』

『広瀬?』


100メートルほどある長い廊下を、
懸命に走る。


人をどんどん抜かしながら、
僕は探した。

ナナを。


ナナはどこにいる?

いない。

いない。

どこにもいない。

僕は屋上へ行った。


そこには下を向いて座っているナナがいた。

『ナナ……』

『来てくれたの?』

『ごめん…』

『いいよ~、私も辛いんだ』

『ナナ…何があったの?』
『今は言えないかな』

『…話たくなったら言えよ?』

『優は…優しいよね』

『全然。俺百合にひどいことしたから』

『ひどいことしたって思ってるから優しいんだよ』

『……そうか?』


『優には頼らない!!優が大変だから』



『何で?頼ってよ』



『優は自分の事でいっぱいでしょ?』



『………』



『優、無理しちゃだめだよ』


─…キーンコーンカーンコーン

授業が始まる音。


僕はまだナナと話したかった。

『授業はじまっちゃったね』

ナナが立ち上がろうとした。


『もう少しいろよ、てか居て欲しい』


『……はい』


僕達は授業が終わるまで話し続けた。


ナナと話していると落ち着くんだ。


こんな気持ちは百合以来。

僕は前に進んでいる。

確実に。

一歩


一歩。


そして百合の事を忘れていく。


ひとつ


ひとつ。




< 105 / 419 >

この作品をシェア

pagetop