この涙が枯れるまで


─…僕とナナは次第にちょくちょく話すような仲になっていた。



もう僕の中は百合の存在がなくなっていく。

ナナの存在で埋めつくされていった。


今日のHRは修学旅行でどこを行きたいか計画するとの事。

班で集まって計画を立てる。

修学旅行まであと一週間。
みんな楽しみになのか、教室がざわめく。

僕もその一人。


だって、ナナがいるから。


『なあ~どこ行くー?』


『行きたいとこあんまなぁい…ブラブラしたいなぁー』

沙紀はガイドブックを見ていた。

『優と広瀬は?』


『俺ー?俺もあんまない』

『私は…星の砂が欲しいな』


僕と歩と沙紀が一緒に口をそろえて言う。


『星の砂!?』



『うん…沖縄ではすごく有名なの。欲しいなって』


『何か綺麗そう!沙紀も欲しい~』


『よし!!じゃあ星の砂買おうぜ!』

とはりきる歩。

『でもどこに売ってんの?』

『……それが…分からないの』


『……まじ?』

『いいじゃん!!探せば!絶対あるよ』

『ごめんね?何か…わがままで』


『全然いいし!!気にすんな』

『そうだよ~』

『うん』

『ありがと』

ナナはクスッと笑う。

その瞬間僕の心が動き出す。


ドクン…


あの百合と同じ感覚。

僕はこの修学旅行で、また涙を流すなんて思っていなかったんだ。





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