この涙が枯れるまで


歩と別れてから僕は考え事ばかりをした。


百合と安里は別れた

とか。

ナナは僕達に心を開いてない

とか。

一番考えた事は、やっぱりナナの事だった。


ナナが気になって仕方がない。


僕はナナが僕達に心を開けてないって聞いてから、すごい寂しかった。

ナナを振り向かせたい。

ナナとの距離を縮めたい。

そんな感情が高まっていった。


あと三日で修学旅行。

準備をしなきゃと思っても、なかなか出来ない。


今日帰ってからやろう。


僕は学校へと行った。


下駄箱にはナナがいた。

いつもならナナは早く来て、本を読んでいるのに、今日はめずらしく遅かった。

『ナナ?おはよ』

『あっおはよ』


─…ドサッ

ナナのカバンから何か落ちたみたいだ。



『ナナ?何か落ちた』

僕は落ちたものを拾った。

どうやら本らしい。

小説とかじゃなくて、詩集だった。

『はいっ…これ。
ナナ詩好きなの?』

『ありがとう。うん、好き』


『おもしろい?』

『うん、優も読んでみたら?』


『俺、文嫌い。』

『あははっそう?』


『うん。でも読む機会があったら読んでみる』


ナナと話していると夢中になってしまう。

いつもより教室につく時間が早く感じれた。


教室につくと、ナナはすぐ自分の席に座って本を読みだした。


昨日の歩の言葉が離れない。


《広瀬は俺達に壁がある》

ホントにそうかな?

もし壁があるなら、あんな風に話してくれるかな。


僕は一日中その事を考えた。




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