この涙が枯れるまで
~第十一章・涙~
―ザーン…
波が僕をナナの過去から引き戻す。
僕は今何を考えているのだろう。
わからない。
でもひとつだけ分かる事があるんだ。
今僕は涙を流しているという事。
『…引いた?幻滅した?』
『…ナナ…俺…』
『やっぱり…びっくりするよね?』
違う…違うよ…ナナ…
僕は君を幻滅したりはしない。
僕のこの涙の意味…分かる?
僕はナナを抱き締めた。暗い中、ナナを抱き締めた。
強く、強く抱き締めた。
ナナはびっくりしていた。
そしてナナは僕の腕の中で泣いた。
今まで自分の中で溜めていたものを吐き出すかのように泣いた。
『ナナ…俺は君を守るよ。だから…ナナ?もう溜めないで。ナナには俺がいるから。ずっとずっと傍にいるから』
『ぁ…りがとぉ…』
『ナナは…俺の傍にいてくれる?』
『うん…いるよ…優』
ナナ…
僕達は似ていたね。
僕はこれからナナがいれば幸せだと思った。
空には不気味な紅い月が僕達を見ていた。