この涙が枯れるまで
僕は今の状況が分からなかった。
目の前に百合がいる。
時間が止まっているようだった。
ドクン…
僕の鼓動が動き出した。百合の時と同じような、ナナの時と同じようなあの感覚に陥った。
百合を見たのは何ヵ月ぶりだろう。
あのお祭りの時以来かな。
久しぶりに見た百合は、髪が伸びていて、上手に巻いてあった。
そして化粧を薄くしていて、素っぴんでも大人っぽいのに、化粧をしたら更に大人っぽく見えた。
すごく、すごく可愛くなっていた。
ドクン…
どうしよう…
その瞬間止まっていた時間が動き出した。
『優?何か言っーた…?』
ナナが百合がいる事に気付いた。
百合はナナを見ると逃げるように、店から出て行った。
まだ僕の鼓動は動いたまま。
僕はナナが好きなのに。治まらない僕の鼓動。
『あっナナ…星の砂あったよ!!』
『嘘ぉ!!!』
『良かったな!!』
『うん!!!』
星の砂を手に取るナナ。僕も星の砂を手に取った。
星の砂はとても綺麗だった。
小さいビンに入った星の砂。
僕もひとつ買う事にした。
ナナとの思い出のために。