この涙が枯れるまで
クローゼットから出てきたのは、小さい箱のようなもの。
『はい!!プレゼント!!』
『まじありがと!! 開けていい?』
『うん!!』
僕はラッピングされた箱を夢中であけた。
ほのかに香る、あの匂い。
百合が去年僕の誕生日に持ってきた、あの香水の匂い。
『…香水…?』
『うん、優に似合いそうだったから!!』
僕を過去へと引き落す。…─去年の誕生日。
《優君に似合いそうだったから…もらって》
《いらない。もらってもつけないよ?》
《それでもいいの》
その次の瞬間、僕は百合の前でひどい事を言った。
僕はこの匂いだけは忘れはしなかった。
百合からの初めてもらったプレゼントを返した僕。
今、目の前にあるのは、あの香水。
ドクン…
百合の顔が、あの時百合が残像として目に映る。
『……優?』
『あっ!!ううん。何でも…ない』
『そう?いい匂いじゃない?』
『うん…』
『つけてね』
『うん…』
甘酸っぱくて、いい香の香水。
この香水は、百合を思い出す事のできる香水なんだ。