この涙が枯れるまで



そろそろ、映画の時間になってきた。
僕達はジュースを買い、席に着いた。
真ん中で見やすい席。
隣はナナ。
映画の最中も僕達はずっと手を繋いでいた。
僕は映画をちゃんと観ていたかな。
内容が浮かんでこない。やめたいのに、考えたくないのに、やめれない。
考えてしまう…

これが未練というやつかな。
未練は時々不安にさせる。
未練は時々苦しめる。
すごく邪魔なものだった。



『面白かったね!』




『そうだね』



『あっ優~!!見て?すごいイルミネーション!!』



外はイルミネーションがすごく綺麗だった。
木には点滅ランプが付けられていて、パカパカと点滅している。
ピンクや、黄色や、青や、黄緑。
さまざまな色で街を染める。

『きれ~…』


『優!!来年も来ようね!』


『絶対だし!!』



そして僕達はイルミネーションの下でキスをした。




ナナ…この時が一番悲しいキスだった。



ごめんね…ナナ…



僕の弱さは、君を悲しませてしまったね。




──…僕達は再びナナの家に戻った。
僕は荷物を持ち、玄関へと向かう。


『ナナ…今日はありがと!!』



『ううん。いいの。楽しかった!』




『俺も』


『優?27日空いてる?』



『うん?』



『優の誕生日でしょ?祝おうよ』



『あっうん。また連絡するわ』



『分かった。送ってかなくて大丈夫?』




『大丈夫!!寒いし、ナナ早く家に入れよ』



『うん、じゃあまたね』



『おう、バイバイ』




僕はナナの家から出て行った。



そして駅に向かい、家へと帰って行った。
道には僕の足跡しかない。
まるで僕は世界で孤独な人間のように。




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