この涙が枯れるまで


僕達は電車に乗り、都内の水族館へ向かった。
そして、水族館に着いた。
百合ときた水族館。
何も変わっていない。
余計鮮明に百合との思い出が蘇る。
ナナは僕の手を引っ張り歩いて行く。


『見て!!イルカ可愛い~!』



僕はこの言葉に反応をした。
百合も同じ事を言っていた。
また百合の残像が目に写る。



『ゆ……』



僕は百合の名前を言いかけた。
でも残像はフッと消え、現実になった。



『ゆ?』



ナナは不思議そうにこっちを見た。


『…ゆっくり見ようぜ?まだ時間あるし…』




『うん、そうだね』





ドクン…
ドクン…


僕の中が変に動き出す。やっぱり僕は百合の事が気になってるのかな。

もし、僕の今の心境を聞いた、世界中の人達は、僕に幻滅をするだろう。ナナも、歩も、沙紀も、安里も。


僕は一歩も先に踏み出せない、弱い人間なんだ。

でも僕はもう一歩を踏み出していた。
それは、道ではなく、


出口のない迷路。


僕は、彷徨い続ける。



< 221 / 419 >

この作品をシェア

pagetop