この涙が枯れるまで
──…
『優今日は楽しかった?』
帰りの電車の中でナナが言う。
『…うん』
『もうすぐ冬休み終わっちゃうね。また新学期始まっちゃうね』
『めんどくさいね』
『そうだね』
僕はただ呆然と外の風景を見ていた。
走り過ぎる風景がとても切なく、胸が痛かった。
『ナナ、今日はさんきゅ』
『こっちこそありがと!!私新学期までバイトあるから遊べなくなるけど、ごめんね』
『全然いいって。また連絡ちょうだい』
『うん、分かった!!じゃあね』
『ばいばい』
ナナは僕の前から去って行った。
僕はナナの後ろ姿を見ていた。
ナナの背中を見ていると、抱き締めたくなる。
こんな欲望を抑えながら僕は帰っていった。
バスの窓に、相合い傘を書いた。
僕は何て書くだろう?
僕の名前の横には誰の名前が入るだろうか。
もう、自分の気持ちが分からなくなっていた。
僕は弱虫だから、一人の女性を決めれないんだ。