この涙が枯れるまで
『優…私不安だよ?』
目の前でナナが泣いている。
僕はナナの涙を拭いてあげた。
それでもナナの涙は流れ出す。
『ナナ…泣かないでよ…』
『嫌…優…私を置いてかないで…一人にしないで…』
『大丈夫だよ…ナナ。僕はナナの傍にいるから』
すると遠くの方から僕を呼ぶ声が聞こえる。
『…優君』
『…百合?』
『優君…私の事忘れちゃったの?』
ナナの後ろに百合が立っていた。
『百合の事忘れてないよ…』
『嬉しい。じゃあ、私のとこに来てよ…
その子を置いて私のとこに来て?』
僕は泣いているナナの方を見た。
『…そんな事は出来ないよ』
『何で…?私の事忘れてないんでしょ?私の事大事なんでしょ……?』
『百合も大事だよ、でもナナも大事なんだ…』
『優君…私悲しい。優君…ちゃんと選んでよ』
『今の俺には出来ない…』
『優君…私あなたが好き』
──…
僕は目を覚ました。
今のは夢?
僕の部屋を母さんがノックしている。
『優?お風呂入りなさい』
『うん』
今の夢は何だったのだろう?
リアルすぎて怖かった。
今でもはっきり覚えている。
《優君…私あなたが好き》
あの百合は何だったのだろう…