この涙が枯れるまで


百合との時間を大切にしなきゃいけないのに、必ず時間は過ぎていく。
何日百合を見ていないだろう?
毎日百合とは連絡をとっていた。
百合と毎日電話していた。
でも物足りない。
電話越しの百合の声。


切なくて、儚くて、苦しい。

電話が邪魔だ。
百合の顔を見て、声を聞きたい。
今の僕には、まだ百合が必要だった。


『百合…準備は進んでる?』


この日も百合と電話で会話をしていた。
あと少しで百合が旅立つ。


僕達に残された時間は、残り少ない。

そんな現実が嫌でたまらないんだ。
それでも僕は百合に優しい声で話す。


『進んでるよ!!』


『ねぇ百合…』



『ん?何?』



『明日…夕方空いてる?』



『うん…大丈夫だよ?』


『会えるかな…』



『うん、私も会いたい…』



『明日…秘密の場所に連れて行ってあげるよ』




僕は明日百合に秘密の場所へ連れて行く約束をした。
百合に見せておきたいから。
こんな狭い街にも、綺麗な場所ならいくらでもあると。


ねぇ…百合?

僕はここに来ると横にまだ君がいると思ってしまう。




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