この涙が枯れるまで
『嬉しいわ、ここは、私の旦那が残していったモノなのよ』
『旦那さんが?』
『ここのベンチでね、よく街を眺めていたのよ…
でもね、去年亡くなったわ…それから、もうベンチに座らなくなったの』
『そうだったん…ですか。』
『だから、ここが好きって言ってくれると嬉しいの』
『あっあの!!』
『はい?』
『お願いがあるんです』
『何かしら?』
僕は百合がこの世界にいたという証拠を残しておきたい。
もちろん僕の心には、残っている。
でも、みんなに見せたいんだ。
『ここに…桜の木を植えさせて下さい』
『桜の木?』
『はい…ここ…殺風景だから。桜の木を…』
『そうね、寂しいものね。分かったわ、明日、桜の木を植えてあげるわ。
その方が旦那も喜ぶだろうしね』
『ありがとうございます!!』
百合、
桜の木…見えるかな…
―翌日…
僕は学校帰り、小さい丘に向かった。
目の前に、大きな桜の木が立っていた。
『どう?気に入ったかしら?』
『ねぇ…お婆さん…この桜の木、天国の人にも見えるかな…』
『見えているわよ…きっと…』
桜の季節になれば、この桜の木も綺麗に咲くかな…