この涙が枯れるまで
──・・・卒業が終わった。
外には、写真を撮っている人が大勢いた。
僕は、教室にいた。
席に座って、ただ、思い出していた。
目を閉じれば、笑顔の百合がいて、僕に話かけてくれる。
隣の席で授業を受けている百合が、綺麗で、僕は恋をする。
歩と沙紀と百合と僕で仲良く会話をしている光景が、目に映る。
『百合…』と呼んだら、『何?』と振り向いてくれる。
百合…
君は何も変わっていないね…
ゆっくり目を開けると、さっきまでの光景が、一瞬にして消えるんだ。
教室には僕、ただ一人。
今日でここに座るのは、最後だ。
百合と送ってきた学校生活も、今日で最後。
僕は、教室を後にした。
門に向かって歩いていく。すると、門の近くに僕の大事な人たちがいた。
歩、沙紀、ナナ、安里、和樹、瞳、
この学校生活でお世話になった人たちが横に並んで僕を待っててくれていた。
もちろんみんな笑顔で。
『…みんな…』
『なぁ~にびっくりしてんだよ!!』
笑顔の歩が僕に近寄り、肩を組んだ。
『いや…別に?』
『優、行こうぜ?』
歩が僕の荷物を渡しながら、優しい笑顔を見せてきた。
僕は荷物を受け取り、今まで見せたことがないような
笑顔で歩を見た。
『おう』
僕はこの日長かった高校を卒業した。
そして僕たちは歩きだした。
学校に、百合との思い出だけを残して。
そして桜が咲き始める。
僕は、丘の上の桜に話かけていた。
『百合…見て?僕に桜が咲いたよ…』
百合…見えるかな?
僕…夢に一歩、近付いたよ。