この涙が枯れるまで


机の上を見たら、手紙が置いてあった。



シンプルな封筒に、見覚えのあるあの人の字。


僕はその手紙を手に取った。



差出人のとこに、《百合》と書いてあった。



百合からの手紙だった。



そんなはずはない。


百合から送られてくるはずがないんだ。



百合は、もう…この世界にはいない人だから。



でも手の中にあるのは、間違えなく百合の字。



何かの悪戯かな…

僕は母さんに聞いてみた。


『母さん…これ机の上にあったんだけど』



『優の手紙でしょ?
お母さん、宛先しか見てないから分からないわ。
宛先は優の名前でしょう?』



『うん…』


これは夢じゃない。
現実なんだ。


百合からの手紙が、僕に届いた。


百合と別れて5年。


百合がいなくなって5年の、今日。



僕は気付かなかった。


今日は何日だという事に。



今日は、4月27日だ。



僕は手紙を持って
勢いよく家を飛び出した。


そして走っていく。


百合との思い出が詰まっている場所へと。



僕が目指した場所は、

学校だ。


ここには、

百合との思い出が眠っているから…





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