この涙が枯れるまで


『何?もうそんな関係なの?』

と聞く歩に僕は迷わず

『うん』

と答えた。

『嘘ー!!??まじで?』



『おう!まじだよ。なっ百合』


僕は百合を見つめた。


百合もすぐに

『うん!』

と言った。


新鮮でたまらない瞬間。


『いいな~』



─ドスッ



いきなり鈍い音が聞こえ、歩が崩れた。

蹴りをいれた人、それは沙紀しかいない。


『バカ。歩なんて知らない』

『ごめん~』

涙ぐむ歩。


笑えて仕方がない。


僕はこんな毎日が続けばいいと思ったんだ。


いや、続くと思ってたんだ。





──…5月。

もうすぐ遠足だ。

すごく楽しみだった。


行き先は県内の遊園地。


しかも百合と同じ班。

全てが最高だった。


でも遠足の前に中間テストが待っていた。


テスト週間中、百合は勉強するため、学校帰りなかなか会えなかった。

とても憂鬱だった。


テスト何て早く終わればいい。


テスト週間中のある日、僕達は図書館へ残って勉強をする事にした。


久しぶりに二人だけで会えると思って、早く授業が終わって欲しいとソワソワしていた。

だから今日当てられたのかな…


『優君、ここでやろ?』

『うん』

僕たちは窓側の席に座った。


夕方の図書館はオレンジ色だった。

僕はあの告白をした時を思い出す。


僕の前に百合が座る。

正面を向いて勉強する百合をあまり見た事がない。

いつも横向きだったから。

横向きの百合も綺麗だけど、正面の百合もとても綺麗だった。


『優君…ここ分かる?』


百合が質問をしてきたのは数学だった。

僕は数学が得意だった。

苦手なのは英語。

百合は英語が得意だった。
苦手なのは数学。


正反対だった。


『分かる?』


『うん…何と無く。』


『教えて?』

耳にかかっていた百合の髪が、サラッと落ちた。



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