この涙が枯れるまで


気が付くと僕は百合の家から逃げ出していた。


まだ寝ている百合を置いて。

僕にとってあの場所は強すぎる。


百合と滝川先輩との思い出がまだ残っている。



百合が先輩の名前を呼んだ時、僕はもうボロボロだったんだ。

確信した。

百合の中に僕が入るスペースが無いと。



~♪

着信音が鳴る。
陽気な音楽は、僕を笑っているようだ。


この電話は百合からだろう。


僕は電話を切った。
今は出たくない。
何を言われるのか分からないから。


また着信音が鳴る。


僕はゆっくりち通話ボタンを押して、百合からの電話に出たんだ。
少し震えながら。



『優君!?今どこにいるの?』


『分からない…』


本当に分からなかったんだ。
百合の家を飛び出して、右へ行ったか左へ行ったかも覚えてなかった。


『どうかしたの?』


百合の声が遠い。
悲しい百合の声が、僕たちの心を遠くしているよう。


『……………百合は俺の事どう思ってるの?』


『えっ?何言ってるの?ねぇ優く……………』


──・・・プツッ・・・



震えた手で、電話を切った。


僕は今何を言った?

僕は百合に何て言った?


一番聞いちゃいけない事を聞いたかもしれない。


僕は周りが見えなくなる。


僕は今何をしているんだろう。



僕は何がしたいんだろう。


昨日の僕に戻りたい。


昨日の幸せな時間に戻りたい。


でも現実はそんな甘くないんだ。




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