虹が架かるまで
それでも中学3年の夏
僕は県大会MVPになった。


かつて僕をリンチした
同年代の部員たちを全国大会へ
連れていくこととなった。


言葉にしがたい気持ちが
頭の中を巡る。


“誰のため?”
“自分のため?”

“チームとは?”

“スポーツとは?”

“バスケットボールとは?”


中学1年のあの夏以来
これといった努力はしなかった。

目立つことを恐れたから。



ただバスケは好きだった。

必要以上の努力は避けたが、
与えられた練習は普通にこなしたし、

試合になれば本気で頑張り
勝つことを望んだ。


そして僕は何より、

平凡かつ純粋に
バスケを楽しめる


その程度の選手になることを
僕は心から望んでいたのだ。




だが自分の思想とは裏腹に
自分にはバスケットボールの
シューティングガードとしての
強烈な才能があるのだと、


中学3年の夏に
県内MVPになった瞬間
確かに感じた。


そして僕は絶望した。




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