虹が架かるまで
「柏木とか桜井もな、
すげぇ選手だとは思うけど
お前ほどじゃないだろ。」

小笠原が続ける。
褒めてるつもりなのだろうか?

「でも、全国では通用しなかった。
俺なんか普通だって。中学のMVPは
たまたまだよ。」

事実、

僕の中学のバスケ部は
全日中で予選落ちだった。

僕は心底安心した。

怖かった。


自分がスター選手になること。

それが何を意味するか。

周りからの嫉みや
憎悪。

僕がバスケットボールを
より上手くなることを
拒み、恐れた中学1年の夏。

思い出したくもない、
悪夢のようなあの夏。
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