シルバーウルフ -Is this love?-
マーチで燃え盛るテナントビルの前を通り過ぎる。その時、俺は右のサイドミラーへ目を向けた。




サイドミラーに映る裕香はもう……、立ち上がっていた。



拳銃をこちらに向けて構えていた。1発、弾きやがった。



裕香の弾丸。右のサイドミラーに着弾した。鏡が砕(くだ)け散った。俺の視界から裕香の姿が消えた。




アクセルを全開に踏んだ。最初の信号の赤を無視して左折した。タイヤが高い音で鳴った。











俺は助手席のメイを覗き見た。





メイは瞳から……、涙を流していた。





……拳銃の音。それで、殺された男と産んだばかりの女の子を思い出したのだろうか?



……母親の死。俺を棄てたとはいえ……、知らなかったとはいえ……、死ぬ必要のなかった俺の母親ってのが死んだからだろうか?





俺にはメイの涙のワケが……、分からなかった。





そんな涙のワケを……、聞くつもりもなかった。








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