シルバーウルフ -Is this love?-
走り続けるマーチ。静かな車内。破損したサイドミラー。俺はハンドルを握りながら思い出していた。



幼い頃、幾度となく讃美歌を歌いに行った女囚刑務所。



本来なら、子供が慰問(いもん)することは規定的にも道義的にも望ましくない場所。



神父の力が作用していたのだろう……。








夏の慰問は子供には辛かった。



最寄りの駅を降りると、太陽光線は真昼の流れ星みたいに、地上に降り注(そそ)いでいた。




俺たちは女囚刑務所までの長い道のりをひたすら歩いた。粘膜がヒリヒリって音が鳴るくらいに喉が渇いた。頭の中が無意識にガラスコップの冷えた水を思い浮かばせた。








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