シルバーウルフ -Is this love?-
マーチは赤信号の交差点にさしかかった。無視をしようと思った。



だが、横断歩道を老婆が背中を丸めて左側から歩いてきた。俺は停止線で停めた。サイドブレーキを引いた。




老婆の手にはコンビニの白いビニール袋。弱い横風にでも吹かれてしまえば、舞い散って飛んでいきそうなくらいに弱々しい足取り。




袋の中身は冷えた弁当だろうか?




根城(ねじろ)でそいつを1人で喰らうのだろうか?





……ふと



俺はあの母親ってのが過ごしていた暮らしが気になった。何を喰って、どんな所に住んでいたのか……?








……なんて、“らしくないぜ”







俺は自分で自分を嘲笑した。




助手席のメイを見た。




メイの瞳の涙は止んでいた。




哀しげに……、心配するように……





 ……まるで目が見えているように、老婆を眺めていた。








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