シルバーウルフ -Is this love?-
「南部。“恋する惑星”って映画を知ってるか?ん?」

南部は目の前で妻を殺されたことが夢の中の出来事のような顔をしている。



「知ってるか?って聞いてんだけど?」

もう、例えるなら“あわわ”としか言えないような南部の顔色。

一瞬の快楽の代償としては、確かにその顔色は正しい。



「“恋する惑星”の中でフェイ・ウォンが歌う“夢中人”ってお前、中国語出来るなら知ってるだろ?」


声を出さずに小さく頷く南部。



俺は親から受ける“愛情”を知らない。

俺は誰かを“愛し”

誰かに“愛される”ことも知らない。


“愛”ってなんだ?


裕太のチャイニーズ娘への心理か?


チャイニーズ娘が南部を殺して欲しいと泣いた涙か?





「南部……、“夢中人”の中に


“一分間抱きしめて”


“十分間のキスをして”



そんな歌詞があるんだけど

お前、あの中国娘にちゃんと、そんなことしてやったの?」






……聞いておきながらなんだけど、まぁ、俺には関係ないか?




「悪いな。色々、詮索しちゃって。ちゃんと、あの世で女房と腹にいた赤ん坊に謝れよ?たぶん、その方がいいぞ?な?」






「じゃぁな!」

サイレントを南部の鼻っ柱にブチ込んだ。


南部は返事もせずにひっくり返って、妻と赤ん坊がいる場所へ追い掛けて逝った。







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