蜃気楼。
「んで、結局なんで嫌われてんの?」
モエは躊躇うも、周りを見渡し
誰もいないのも確認すると、
静かに話し始めた。
「サユリ…妹がいるんだ。
いや、正確には居たんだ、か。」
過去形?
「サユリと妹…サエカちゃんって言うんだけど、
すっごい仲良かった訳。
けど、サユリと違ってサエカちゃん、
メッチャ頭よかったんだよねー。」
ありきたりかもしんないけど。
と呟くモエ。
「そしたら親がさぁー、サエカちゃんしか
相手にしなくなったつーか、
娘だと認めなくなったんだよねー。」
有り得なくない?
と、私の顔を覗き込む。
「んでさー、サユリかまって欲しくて、
悪いこと、するようになったの。
そしたら親、余計見捨ててさぁ。」
顔を曇らせる。
「 サユリもっとぐれちゃって、
そしたらサエカちゃん…」
言葉を切る。
「自殺したんだよ。」
えっ?
「家族壊したのは、
お姉ちゃん傷付けたのは自分だって、
私が居なければ良かったんだ。って言って。」
「そしたらね、親はもっとサユリ
にキツく当たるようになって…。
周囲はサユリを人殺しよわばりし始めたんだ。」
サユリのせいなんかじゃないのに。
と言って唇を噛む。