蜃気楼。
きっと今、モエの瞳には私が映っているのだろう。
立ち上がり、歩き出そうとしている私の姿が。
別に、逃げようとか思ってないから…。
そんなに心配しなくていいよ。
思わず、そう言ってしまいそうだった。
「帰ろうかと思って。」
「ドコニ?」
「心配してると思うよ?」
最初は、意味が分からなかったようだが、
考えた末、分かったらしい。
パッと明るくなるモエの顔。
「サユリ、心配性だもんね?」
「ん。」
「嫉妬してるよ?キット。」
「ん、期待しとく。」
期待しとく。ってー!笑い出すモエ。