蜃気楼。

きっと今、モエの瞳には私が映っているのだろう。

立ち上がり、歩き出そうとしている私の姿が。


別に、逃げようとか思ってないから…。

そんなに心配しなくていいよ。


思わず、そう言ってしまいそうだった。



「帰ろうかと思って。」


「ドコニ?」


「心配してると思うよ?」



最初は、意味が分からなかったようだが、

考えた末、分かったらしい。

パッと明るくなるモエの顔。


「サユリ、心配性だもんね?」


「ん。」


「嫉妬してるよ?キット。」


「ん、期待しとく。」



期待しとく。ってー!笑い出すモエ。

< 94 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop